老人ホームで結婚式を挙げる新しい孝行のかたち。実際あった3つの例

2018-10-19

「式に出ることができなかった、老人ホームで暮らす大好きな祖父母に結婚式を見せたい」
「職員の結婚を職場の仲間や入居者と一緒に祝いたい」

 

私が勤める職場(特別養護老人ホーム)で、職員同士の結婚式が行われました。

現代の結婚式はホテルやレストランなどの華やかな場所だけでなく、遊園地や花畑、列車、倉庫、動物園などいろいろな場所で挙式ができるようで、夫婦の憧れや思い出の場所であったり、または第三者への思いであったり、さまざまの様です。

私自身が介護士であるため、老人ホームという特殊な場所で結婚式を挙げるメリットもデメリットも想像できますが、今回実際に体験する事ができたので、異なるカップルの例も交えながら“老人ホームでの結婚式”について紹介したいと思います

 

 

実際に老人ホーム挙式をおこなった3つの例

【老人ホーム挙式例 1】介護士カップルが挙げたサプライズ結婚式

  • 場所:特別養護老人ホーム(新郎新婦が勤務する事業所)
  • 使った部屋:レクリエーションルーム
  • 企画:事業所の一部職員がすべて準備・手配
  • 招待客:なし
  • 別途で結婚式の予定:あり
  • サプライズ:新郎新婦をはじめ入居者さま、多くの職員に内緒で企画

 

まずは私が勤める特養で実際に行われた結婚式についてです。

新郎新婦はともに同じ特養に勤める介護士で、結婚式は施設のトップ他数名の職員によって企画され、準備から実行に至るほとんどを施設内で行いましたが、施設のイベントに乗じて行われたため特別な労力が少なく済み、無理なく新郎新婦へのサプライズプレゼントができました。

 

直前まで何も知らなかった新郎新婦。
急に呼び出されたと思えばメイクをさせられ、ウェディングドレスとスーツに着替えて登場です。

ウェディングドレスとブーケなどの装飾品は施設からのプレゼント。
新郎にはタキシードではなく、イベントのために用意した自前のスーツを着てもらい、隠していたバージンロードと祭壇、変身グッズで見事牧師になった職員を引っ張り出して準備が完了。

お二人は別途で正式に挙式予定があるため招待客はなく、施設職員と入居者全員で結婚をお祝いです。

誓いの言葉やケーキカット&ファーストバイト、フラワーシャワーなどをわずか30分で詰め込むという荒業でしたが、普段は質素な装いで仕事をテキパキ行う介護士が変身した姿に思わず「おおっ!」と歓声が沸き、認知症の入居者がタイミング良く発する言葉が笑いを誘ったり、職員と入居者は笑顔に包まれ、目には感動の涙で大盛り上がりでした。

 

入居者の皆さまも自分の事のように喜んでいたのが印象的で、花嫁姿を見た途端に大声で泣きだした入居者は職員に反発ばかりしていた方。
鼻水と涙で服を汚しながら新郎新婦の名前を呼んでいたのは100歳近いおばあちゃん。

私たち介護職員は高齢者のお世話をするのが仕事です。
だからこそ自分が偉いと勘違いしてしまう、もしくはそう勘違いしている自分に気付いていない介護士が多いのですが、こうして少し日常から離れたところで見た入居者の一面は、とても愛おしく、そして感謝を感じるものでした。

 

【老人ホーム挙式例 2】おばあちゃんに見せたい!

  • 場所:特別養護老人ホーム(新婦が勤務する事業所)
  • 使った部屋:食堂
  • 企画:新郎新婦と事業所職員がブライダルコースがある地元の専門学校に依頼
  • 招待客:親族
  • 別途で結婚式の予定:なし
  • サプライズ:新婦が勤務する施設に入居している祖母に結婚報告
  • 参考:福祉新聞

 

こちらの例では新婦が介護士で、勤務先の特養で結婚式を挙げています。

 

新婦の勤務先である特養に自身の祖母が入居しており、結婚式を見てもらいたいという思いを上司や施設長にも相談をしていたため、施設全体の協力が得られたそうです。

ヘアメイク、着付け、司会、アテンド、会場装飾などすべての工程を、施設が依頼してくれたブライダル専門学校の生徒が担当。

入居者からの祝福はもちろん、新婦からの手紙で「ばあやん、私結婚したよ。花嫁姿見せられたよ」と祖母に話し掛けると、普段声を発しない祖母が声を上げて応えたそうです。

 

※家族の力というのは偉大で、似たような事が実際に起こる事はめずらしくありません。
普段は会話が成り立たない認知症の入居者が、家族の面会時にはしっかりと受け答えをしている事もあります。

 

【老人ホーム挙式例 3】介護士じゃないけれど祖父母に見せたい!

  • 場所:祖父母が入居している有料老人ホーム
  • 使った部屋:レクリエーションルーム
  • 企画:新郎新婦がフリーのウェディングプランナーに依頼
  • 招待客:両親のみ
  • 別途で結婚式の予定:別の場所で既に行っていた
  • サプライズ:結婚式に参加できなかった祖父母に結婚式を見てもらう
  • 参考:オリジナルウエディングづくり weco (ウェコ)

 

こちらの例では新郎新婦とも介護職ではないので、老人ホームとの交渉をウェディングプランナーに依頼しています。

 

既に挙式を済ませていたのですが、結婚式に参列できなかった祖父母にも結婚式を見せたいという思いから計画に至ったようです。

参列者はご両親と老人ホームの入居者と職員。
開場はレクリエーションで使用する大部屋にチャペル仕様の装飾を施し、オルガン奏者や聖歌隊、入居者に配慮した食事の業者手配など、ウェディングプランナーがしっかりと打ち合わせ・準備をしてくれたようですが、新郎新婦には高齢者に対する専門知識がない事に加え、老人ホームに場所と人手を借りることなども考えると、双方で大変な苦労があったと思います。

また、老人ホームにとっては大きな負担になる事、一般的な会場ではないため特殊な制約があり、ウェディングプランナーや業者に支払う依頼料が高くなることは必至です。

同じように実現するのは難しいと思いますが、挙式を見た祖父母だけでなく他の入居者にとっても良い体験になるので、ぜひこれから増えて行けば良いなと思います。

 

老人ホームで結婚式をするに必要な準備と注意点

入居者の体調を気遣う

老人ホームでの挙式は、専門の知識を持った職員が大勢いるので過剰な心配は不要ですが、入居している高齢者の多くは体調管理が難しく、たった数時間の活動でさえも具合が悪くなる原因になる事があります。

また、人によっては1時間の内に何回もトイレに行く事もあるので、しっかりと配慮されたタイムスケジュールと動線を確保する事が重要です。

 

幸せを祝う素敵な場になるので、参加者である入居者に不便をかけないようにしっかりと計画しましょう。

 

入居者に合わせた食事と飲み物を手配

お祝いの定番である豪華なお食事やケーキも配慮が必要です。

入居者の多くは食事が細かくカットされていたり、飲み込みに問題がある方などでしたらペースト状になっていますから、せっかくのお祝いの席で豪華なお食事を楽しむ事ができません。

食べやすいものを選んだり、加工されていない状態のお料理を食べる前に見ていただくなどの配慮が一般的ですが、のどに詰まってしまったなどの緊急事態への備えも含め、しっかりと相談してみんなで楽しめるようにしましょう。

 

不穏を引き起こす原因にもなる

老人ホームで暮らす入居者は生活の刺激が少なく、大きな刺激が時にはデメリットになってしまう事があります。

私が勤める職場で結婚式が行われた日には、娘の嫁入りを思い出して機嫌が悪くなった男性入居者がベッドから転落したり、自身や家族の結婚式を思い出して興奮したことで不眠になる方がいました。

このような変化は認知症の高齢者に起こりやすい事ですが、計画を行う上で案外盲点になりやすいポイントです。

 

この記事の要点

  • 老人ホームで挙式するのは老人ホームの職員が主だが、介護施設の職員でなくても老人ホームで挙式を行った例もある
  • 老人ホームで結婚式を挙げたい場合は職場(または家族が入居している施設)に相談をした上で、入居者の体調や食事、招待客の有無などの配慮が必要
  • 老人ホームで暮らす入居者にとって、結婚式に参加する事は集団レクのような連帯感、感情の共有といった刺激がメリットになる反面、大きな刺激は不穏や事故の原因になる可能性もある

 

Posted by garu-mama