老人ホームで暮らす親が幸せになる、面会ができない家族に知って欲しいこと

2018-04-12

大切な私たちの親や家族。老人ホームでどんな暮らしをしているかご存じですか?

ニュースなどで高齢者虐待が取り上げられる中、あなたは「私の家族は老人ホームで幸せに暮らしている」と言いきれますか?
それとも、「幸せじゃない。でも入居するしかなかった」と、毎日の後悔や申し訳ない気持ちでいっぱいですか?

私たちの多くは、老人ホームで暮らす家族が望む事を勘違いしています。

どんなに私たちが考えても、老人ホームで暮らす親や家族の気持ちは“私たち家族だからこそ”わからないものです。

離れて暮らす家族を思う、老人ホームで暮らす親や家族の優しさがあるからです。
もし私たちが「ここで暮らせて良かったね」と言えば「そうだね」と笑顔で返してくれるでしょう。

でも介護士はそんな仲良し家族のやり取りを見て胸が痛みます。
今は家族に会えて笑っているけれど、夜になれば泣く事もある。
具合が悪くなれば家族に会いたい。
トイレやお風呂で介護士と二人っきりになれば家族の話。

多くの入居者は、家族に言えない思いを押し込めきれません。

我慢しなければならない。でも誰かに聞いて欲しい!

家族以外に話せるその相手は、“いつも家族の代わりに世話をしてくれて、話し相手になってくれる“介護士です。

今回は老人ホームで暮らす家族の思いと、私たちが家族のためにしてあげられる事がテーマです。

老人ホームと言っても、業態からいくつもの種類に分類されますが、私が介護士として働く特養(特別養護老人ホーム)は、その中でも高齢者、とりわけ一般庶民の“受け皿”的な存在です。
今回は深く触れませんが、私が言う“受け皿”というには訳があり、特養を見れば一般庶民である私たちの老後がわかります。

その特養で実際に聞いた“入居する親(家族)の本音”

私たちの多くは、老人ホームで暮らす家族が望む事を勘違いしています。
老人ホームで暮らす親や家族は本当に幸せなのだろうか。
介護士にだからこそ話してくれる“本音“と、離れて暮らす私たちに望むことは何でしょうか。

 

 

老人ホームで暮らすという事

 

“老人ホームで暮らす“という事を一言で、そして最も適した言葉に置き換えるならば、

“自由を奪われる”です。

理想主義者であったり、介護側の気持ちでしか見ていない同業者には、“安心”や“最後の住処”などきれいな言葉にしたがる方もいますが、実際に介護をしてみると分かります。

老人ホームに入居すること。私には“自由を奪われる”よりも適した言葉が見つかりません。

 

介護を理想だけでやり通すことはできません。

もし理想通りの暮らしができる老人ホームがあるなら、それは高額な入居費用が必要な有料老人ホームか、事故が多発するブラック施設です

介護は事業です。会社なのでお店と変わりありません。
事故を起こして利益・評判を落とすわけにはいかず、人気が出れば新しい施設をつくって法人を大きくします。
自由を理由に事故ばかり起きていたり、事故が起きないように職員を増やして対応していたら利益になりません。

想像してみてください。

「お母様が構わないでというので、その様にしていたら亡くなってしまいました」と施設から言われました。
「そうですか。ありがとうございました」と言えますか?

老人ホームは“生かす”ところです。
「食べたくない」と言われて食べさせないなんて事は、基本的にありませんし、「構わないで」と言われて放置する事もできません。
入居者は常に監視・管理されて生活する事に耐えて暮らしています。

そしてもう一つ。

私たち家族が「頑張って生きて欲しい」と願うなら、老人ホームは“何としても生かす”事を考えます。

たとえ入居者が「はやく天国に行きたい」と願っていても、家族の意向がある限り、老人ホームは無理をしてでも生かす必要があるのです。

施設の運営上の理由と家族の意向。
この二つがある限り入居する親や家族に自由はありません。

 

老人ホームに入居して不幸だと感じる理由

 

老人ホームに入居して不幸だと感じている方は多くいます。理由として多いのは、

  • 自由がない
  • 家族が会いに来ない
  • 家で暮らしたい
  • 話し相手がいない
  • 出かけられない
  • 集団生活がいやだ

上記の理由ほど多くありませんが、他にもこんな不満を聞きます。

  • ご飯がおいしくない
  • 同性介助(同性の職員による介護)をしてくれない
  • 認知症の入居者が多くて嫌だ

自由がないのは先ほどお話した通りですが、やはり離れて暮らす事への不満や家族がなかなか面会に来られない事、集団生活そのものへの不満、認知症入居者が増加する事への不満が多く聞かれます。

ご飯がおいしくないのは、入院して病院食を食べた事がある方なら想像がつくと思いますが、健康管理のため薄味で健康的なオカズです。

他に同性介助に対して不満があり、こちらは女性の入居者に多く見られます。
※老人ホームが同性介助に前向きになれない理由は、老人ホーム・デイサービスが同性介助(同性介護)を諦める理由。なぜ難しい?で紹介しています

 

老人ホームで暮らす親や家族にしてあげたい事

 

老人ホームで暮らす親(家族)は“自分は捨てられた”と感じている事が少なくありません。
でも実際捨てた覚えのある方はそう居ませんよね。

さびしいからです。さびしいと感じてしまうから、本当はそう思いたくないのに“捨てられた”と思ってしまうんです。

離れて暮らす私たち家族ができる事、それは“いつもあなたを気に掛けています”という気持ちを伝える事です。

物を買いそろえたり、ただ面会に来るだけではダメです。

 

悪い例

先に、よく見られる悪い例を挙げます。

  • 面会が極端に少ない
  • 行事や誕生日・記念日に会いに行かない(連絡がない)
  • 自分の身の上話や愚痴ばかり話す
  • 家族だけのプライベート空間をつくらないで、他者がいる食堂などで面会する
  • 忙しそうにしたり「忙しいから」と口に出す
  • 入浴中や寝ているからと、声を掛けないで帰る
  • 入居している老人ホームの悪口を言う
  • リハビリを勝手に行う

 

面会が少ないのは理由があると思いますが、入居する親や家族にとっては一番さびしい事です。
自分は捨てられたと感じる一番の原因ですから、面会に行けないなら他の手段で関わりを強める努力が必要です。

面会が少なくても、敬老会やお祭りなどの行事や誕生日、記念日に会うだけでもうれしいと思います。
特に行事は、一緒に参加する事ですてきな思い出にできます。

 

面会はいろいろな話をしたいですし、笑ったり泣いたり感情を出すには他人の目がない方が良いですよね。
自分の話を他人に聞かれたくない方も居ますし、入居者同士で耳を立てて聞いている事も珍しくありません。他人の情報はいくつになっても気になるものです。

 

また、忙しそうにしたりそれを口にする事で、「面会に仕方なく来ている」感じが出てしまいます。
もしかしたら、「忙しいけどお母さんのためなら会いに来るよ」という気持ちをアピールしたいのかもしれませんが、特に精神を病んでいる時には誤解されやすいので避けた方が良いでしょう。

 

他にはせっかく面会に来ても会わずに帰る家族が居ますが、あとで面会があった事を知った入居者は「なんで声を掛けてくれなかったの」「会いたくないんだ」と感じてしまう事があります。
たとえ入浴中でも、せめて職員に声だけでも掛け、「会いに来たよ」と本人に伝えてたって迷惑になりません。

 

そして意外な落とし穴となる注意点ですが、入居している施設の悪口を言う事も避けた方がよいでしょう。

共感する事は大切ですが、私たち家族が主になって施設の悪口を言えば「そんなに悪いなら、他の老人ホームに移してくれれば良いのに」と悲しい気持ちにしてしまう可能性があります。

逆に愚痴を聞いたなら共感して、施設に確認したうえで解決する事が大切です。

 

リハビリを勝手に行うのも、体調変化や事故などに影響する事なので避けた方がしょう。

 

面会に行ったらしてあげたい事

  • 「会いたかったよ」の一言を伝える
  • とにかく話を聞いてあげる
  • 日常をしていた事を一緒にする
  • 散歩
  • 職員や仲良くしている他入居者へのあいさつ
  • ちょっとした一言で面会を有意義にする

 

お顔を見たら第一声は「会いたかったよ。元気にしていた?」など、会えてうれしい事と気に掛けていた事を素直に伝えると喜んでくれるハズです。

面会は自分たちだけの空間でしっかり話を聞いてあげる事が一番大切です。
普段は話したくても話せない事が多いので、面会の時には思う存分話してもらいましょう。
話が苦手ならこちらの近況などを報告し、あとは一緒にお茶を飲んだりテレビを見るなど、いままでの日常を思い出す時間をつくるだけでもうれしいと思います。

入居者はなかなか散歩に出かける事ができません。
ぜひ一緒に歩いたり、車椅子を押してあげてください。

職員や仲良くしている他入居者へのあいさつも大切です。
特に昔の方は礼儀を大切にしますので、自分の家族があいさつもできない人間だと思われたくない方が多くいます。

ちょっとした面会テクニックですが、「じゃあまたね」ではなく、「次は○頃来られるけど、その時は○○しようね」など、次回の面会を想像できる楽しみがあると良いですよね。
約束は漠然としたものよりも、具体的な方が受け取りやすくなります。

他には「今日来れなかった○○に伝えておく事はある?」など、“老人ホームの外”との関わりを保つ事も、私たち家族の役割ではなでしょうか。
いくつになっても、会えない親族や友達との関わりは気になるものです。

もうひとつ、相談する事も大事です。
老人ホームで暮らす入居者は、自分の存在理由を見失いやすくなります。
「自分はまだ必要とされている」「頼られている」という生きがいにつながるので、ぜひ金銭面以外の内容で頼ってみてください。

 

会えなくても、離れていてもできること

  • 毎週/毎月でも電話や手紙で連絡を取る。
  • 老人ホームから情報をこまめに得る。
  • 行事や誕生日・記念日にはメッセージカードなどを送る
  • ビデオレターやデジタルフォトフレームを活用する
  • テレビ電話

家族や知人から届いた手紙やメッセージカードを大切にとってある方は多くいます。
手紙はうけとる事にもちょっとした楽しみがありますよね。とても喜んでくれます。

施設からの情報提供をこまめに請求しましょう。それだけで入居する家族を守る事につながります。
虐待を防ぐのは施設でも職員でもない!家族だ!という私の意見聞いてみませんか?で触れています

ビデオレターやデジタルフォトフレーム(タブレットとアプリを利用しても良い)・テレビ電話(スマホでも可)を活用すれば、面会が出来なくても顔と声、メッセージが届けられます。そこに一緒に居る様な気持にもなれますよね。
施設への情報収集とあわせてこれらのデジタル機器を活用する事で、時間がなくても家族とのつながりが実感できます。

 

スマホなどを使用する場合は、wi-fi電波で活用すれば医療機器に影響ありません。
あまり大きな声で言えませんが、そもそも携帯電波がペースメーカーなど医療機器に影響するのは1.5cm程度の至近距離での話です。

私が働く特養では業務用にスマホが使用されていますし、携帯電話を所持している入居者もいます。

 

あとがき

 

今回は入居者とその家族を例に話しました。

例外として“自分の面倒を見てくれる家族が居ない事を理解している”方も居ますが、家族仲が良くなかったり、死別などの理由からひとりで暮らすことに慣れている場合、家事や健康管理の不安を解消できる老人ホーム入居が幸せだと感じる方が多いようです。

介護士として働いていると、いろいろな境遇で生きて来た話を聞けます。そのお話から感じる事ですが、

“どんなに長く一緒に暮らしていても他人。伝えようとしなければ伝わらない“

私はそう強く感じます。
恥ずかしいかもしれません。うまく伝えられないのかもしれません。
でも、不器用でも本当に伝えたい気持ちがあれば、少しは伝わると思いませんか?

口に出せないなら手紙でもいいんです。むしろ、いま入居している方の時代は手紙が主流なんですから、何もかしこまる必要はありません。

大切なのは伝えようとする気持ち。
老人ホームに入居しているという事は、“すでに終わりが遠くない所に来ている“という事です。

いつ体調が変化するか病気になってしまうかなんて、介護士にも看護師にもわかりません。

二度と伝えられず後悔しないように、せめて“さびしい思いをさせないでやりたい“という気持ちが必要ではないでしょうか。

そんな私たちの姿勢を見たら、大切な親や家族も幸せだと感じてくれると思います。

 

Posted by garu-mama