同性介助(同性介護)はなぜ難しい?介護施設で実践するも断念した経緯

2018-03-29

 

あなたが介護を受けるなら、安心感のある同性の介護士がいいと思いませんか?
それとも、あえて異性の介護士を希望しますか?

多くの方が「同性に介助してもらいたい」と答えると思いますが、実は介護施設では同性による介助がほとんど実施されていません。

 

同性介助(=同性介護)は言葉通り「男性利用者の介護は男性の職員が行い、女性利用者の介護は女性の職員が行う」という事です。

介護では入浴やオムツ交換、全身に軟こうを塗るなど、利用者の全身を「見る」「さわる」という事が日常的にありますが、それが異性の介護士によって行われます。

泌尿器科や婦人科にかかった事がある方は、その時の事を少し想像してみてください。

排泄ケア(オムツ交換や排泄行為のお手伝い)などは婦人科や泌尿器科の比ではありません。

あなたや、あなたの家族が介護サービスを利用するという事は、まず異性に排泄介助をされる事を覚悟する必要があるのです。

最悪、同性介助しか受け付けないと拒否する事もできますが、それが結果的にケガや病気になる原因を作るなど、自身の不利益につながる恐れがありますので、オススメしません。

 

なぜ老人ホームやデイサービスなど介護施設は同性介護を諦めてしまうのか。
私が施設でテスト運用した時に感じた事をもとに、その原因を探りたいと思います。

 

 

介護施設で同性介助は実現できるのか

同性介助は施設運営にメリットがない

まず大前提ですが、同性介助の取り組みをしても施設にはメリットがほとんどありません。

わざわざ大変な思いをして同性介助に取り組まなくても、入居まちの高齢者は絶えませんので、実施するには法人や職員の熱意が重要です。

 

同性介助に対する介護士の意識

では、熱意が必要な職員は同性介助についてどう思っているでしょう。

私たち介護士の仕事は主に【食べる】【出す】【移動する】介助であり、粘膜や肌の状態なども細部にわたって“観察“する義務があるので、本来ならば“同性による介護をすべき“と考えています。

自分だって、介護士が高齢者にしている事を異性にされたくないですから。

でもそれ以上に、「できない」「理想だ」「仕方ない」と否定的な意見が多いです。

そんな彼らは平然と人前で服を脱がせ、トイレの扉は開けっ放し。
はじめて利用される高齢者には「はじめは恥ずかしいですよね」「気にしないでください」と平気で言います。

我慢するのは高齢者で介護士ではない。

“恥ずかしい気持ちは慣れるんじゃなくて我慢させている“という事を考えられない介護士が多いのも事実。

そもそも本気で同性介助に取り組もうとした事があったのでしょうか。
結局のところ、介護士は目の前の高齢者を機械的に対処する事で精一杯。

“自分たちが頑張ったら、何か変わるかもしれない“なんて考える余裕は、ほとんどの介護士にはありません。

 

同性介助を3カ月テスト運用してみた

同性介助に向けた下準備

幸い、私の仲間には同性介助に前向きな方がいたので、グループの取り組みとして“同性介助の有用性“と“実施の可能性“を検証させてもらえる事になりました。

施設協力のもと同性介助の実施です!

 

私たちが同性介助を実施するにあたって行った準備は以下の通りです。

  • 職員それぞれが“同性介助で考えられるメリット・デメリット”を考え、実現に向けた目標を設定
  • 同性介助が難しい時間帯を把握・解決策の設定
  • 同性介助が必要なとき、業務をスムーズに交代可能にするための事前打ち合わせ
  • 他部署への協力依頼
  • 取り組みについて入居者に説明し了承を得る

これらの中で“同性介助が難しい時間帯の把握と解決策の設定”と“他部署への協力依頼”がポイントになりました。

まず同性介助が難しい時間帯の1つに“職員が一人しか居ない時間帯“があり、私が勤める施設では午前中の1時間と午後の入浴介助中、そして夜勤帯でした。

午前中の1Hと夜勤帯は実施が不可能とし、午後の入浴介助は入居者の性別に合わせて職員が交代し、可能な限り入浴日の調整もしました。

 

もう一つの時間的な問題は職員の組み合わせが“男×男、女×女“”ペアの時間帯です。
これは施設に交渉しましたが、検証のためだけにはできないとの事でシフトアプローチは断念。

代案として、同性介助の際に同性の職員と交代ができるよう、事前に“他部署への協力依頼”をしてついに、検証を開始する準備ができました。

 

実際に同性介助をやってみてわかった事

メリット

  • 利用者の精神負担の軽減
  • 同性ならではのコミュニケーションや対応が可能。精神的・身体的な情報を引き出しやすくなる
  • 職員が成長して、意識が変わった

 

「これだけ?」と思いましたか?これだけです。
たった3つの事ですが、どれだけ大切な事なのかは実際やってみた時に初めて感じると思います。

利用者の笑顔が増え、認知症の方の介助拒否も減り仕事が円滑になる事もありました。
私たちを気遣って気にしないフリをしてくれていますが、できる事なら同性に対応して欲しいのが本音です。本当に優しいですよね、高齢者の方々は。

そして、介護の苦労が利用者の笑顔に結びつく喜びを知った職員は、また違う方法で利用者さまの笑顔を増やそうとしてくれます。

どうでしょうか。

私たちにはこれで十分に苦労が報われたと感じました。

 

デメリット

  • 職員の男女比・入居者の男女比に差がある場合、職員への負担が増加する事がある

私が勤める施設は利用者と職員の男女比が正反対で、職員は男女比6:4で男性職員が多く、入居者は7:3で女性の方が圧倒的に多かったのですが、同性介護をする事で女性にオムツ交換・入浴などの重労働が偏ってしまったり、男性は何でも屋の様に転々とするポジションになってしまうなど、職員に大きな負荷が掛かってしまいました。

 

私たちが出した結果は、“現状では同性介助の実施は難しい”

 

私たちは“現状では同性介助の実施は難しい”という結論を出しました。

理由はいくつかに分けられますが、行き着くところは全て同じ「男女比率」と「人員配置」によるものでした。

同性介助を諦める要因

  • 職員の男女比

これまで介護は女性が占める人数割合が多いというのが一般的でしたが、いまは夜勤がある様な介護施設の職員は男性が多くなりました。

男性職員は「力がある」「家庭を持っても退職しにくい」というような単純な理由で歓迎された時期もあった様ですが、現在では遠回しに男性の応募を避ける求人を出し、女性職員獲得を求める施設もあります。

 

  • 利用者の男女比

高齢者は圧倒的に女性の方が多いです。

平成28年 総務省の資料によると、65歳以上の男女比は女性100%に対して男性が76.4% 70歳以上で70.1% 75歳以上で63.7% 80歳以上では54.8%となり女性の約半分となっています。

 

  • 職員の人数が不足

老人ホームなどの場合、国が定めた基準で「利用者3人に対して職員1人」と定められています。

1フロアー30人の利用者さまに対して10人の職員がいるという事ではなく、利用者全体に対して介護・看護職員を合わせて3:1であれば良いそうで、実質1人で10人(夜勤は20人)程度の割り当てになるため、日々の生活のお手伝いだけで精一杯な状況です。

 

  • 他部署と協力が必要

上記の理由から、職員の組み合わせによっては他部署と職員を入れ替える必要があり、徹底して行うには施設全体で人員の配置見直しが必要になるが、人員に関しては思い通りにならないのでほぼ不可能。

同性介助実施の課題

 

以上のように、現状は同性介助に取り組む事は難しいという事が分かりました。

できない理由を肯定するようですが、同性介助は介護業界が抱える人材不足が解消されないうちは現状維持になると思います。

 

介護が必要になる前に私たちができる事は、

・より長く健康でいること
・自分でできる事をより長く維持すること

この単純だけれど難しい事が、自分を守る大きな武器です。

そもそも健康で自立した生活ができるなら介護施設に入る必要もデイサービスを利用する必要もありませんね

いずれにしても、介護に同性介助が根付くにはまだまだ時間が掛かりそうですね。

Posted by garu-mama